3.26.2013

Bit-O-Honey and Lakrids

安心して欲しい。ブログタイトルのBit-O-Honey というキャンディーバーとラクリスだが、決して一緒に食べているわけではない。

何故わざわざググってまでそんな古いキャンディーを引っ張り出して来たかというと、大学の心理学の味覚と記憶の授業でこれを扱っていたから。確か出ていたのは中年女性の例で、若かりし頃付き合っていた恋人の記憶とBit-O-Honeyが結びついていた。残念ながらその恋人とは別れてしまったが、十数年ぶりに、Bit-O-Honeyを食べたらその恋人のことを思い出して、現時点では幸せな結婚生活を送っているのにもかかわらず、思わず泣いてしまったとかなんとか。だから何なの?って話だが、そんな教科書そのまんまの体験を最近ワタシがしたのだ。

未だ日本人に圧倒的な不評を得ているいラクリスだが、もともと北欧経験者のワタシはラクリスが食べられるし、ある程度の愛着すらある(そしてラクリスティーは美味しい)。基本的にお菓子は買わないことにしていたので、自ら進んで食べるコトはなかったが、ついに禁断の箱を開けてしまったというか、リンゴを食べてしまったというか、買ってしまったんですよ。ラクリスを。しかも北欧N国で食べていたのと同じものを。

もう、あの頃のやるせない気持ちとか、感情とか、出来事とか、青い空とか、お気に入りの靴とか、習慣とかが、わっと溢れて来て、処理に戸惑ったけど、一番困ったのはそんなノスタルジックな感情やセンチメンタルな記憶や甘酸っぱい過去や淡い思い出ではなく、「あの頃の方が勉強していた」という記憶。いや、漠然とはわかっていたんだけどね。多分、気付きたくなかったんだよね。うん。


もうすぐ(労働交渉決裂でいつまで続くかわからない)春休みだから、大人しくデンマ語でもすることにするわ。



親族間の集まりでの一コマ。中央のかろうじて7時から11時の間で残っているのがラクリスケーキ。
それにしても、どうしてトリガーがブラウンチーズではなくてラクリスだったんだろ?

3.19.2013

そこに壁はあるか?

語学学校が始まって早くも2か月が経とうとしている。お弁当持参の為に一部の食材の消費が飛躍的に増え、週一で購入する黒パンの塊(3日でなくなる)やらレバーペーストやらチーズやらがほぼワタシ一人の胃袋に消える現実をどう受け止めて良いものか。半透明人間冬眠生活から目覚めた脳が活動を開始したと信じたい。

真偽の程は定かではないが、昔のロシアの街にある地図にはその地図のある場所を示す「← You Are Here」 の表示がなく、地図の意味をなさないとの逸話があった。デンマーク語の海に浮かんだ梯子に過ぎないのだろうが、語学学校という枠組みの中で「アナタ(のレベル)はここですよ」と位置付けされて、与えられるまま教材をこなし、導かれるままついて行くのはある意味大変ラクだ。周りに同じレベルで学習している仲間がいるというのも大きいだろうが、やはり餅は餅屋。プロに習うのは一人で疑問を感じつつ学んでいた頃とはかなり違う手応えがある。

学校が始まる前に行われたレベルチェックでは会話・ディクテーション・穴埋め・メールの返信のライティングがなされた。「アナタ、話せないだけで読み書き、聴くのは出来るのね」との喜んで良いかわからない試験官の感想に言葉が詰まった。うーん。正直にデンマ語を話したのはその日が2度目だったが、テスト内容はもっと難しくても良かった旨を伝えると今度は試験官が困っていた(うっ。そう言えばドイツでデンマ語を取っていたから、嘘をついていたことになる。正確には来デン半年で2度目だったか。何れにせよ、試験官さん、ごめんなさい。ちなみにそれまで唯一デンマ語を話した経験は、お婆サマから頂いた結婚祝いのお礼。いかにワタシが温い生活をしているかがわかる)。

何とか初級からのスタートは免れて始まった語学学校。どんなインターナショナルなクラスに当たるんだろう?と期待に胸を膨らませて向かった教室にはヨーロッパ人しかいなかった。(デンマークには全く関係ないけれど)アファーマティブ・アクションって何だったっけ?と思うくらい真っ白。春の陽気に浮かれていないで紫外線対策しておかないとな、と思うくらい真っ白。とにかく笑っちゃうくらい真っ白。聞けばほとんどが在デン2年半から5年のベテランさん達。皆さん一体、何故ここに?

しかし授業が始まると、そこまで恐れることはなさそうな感触。「なんだ、みんな話せないぢゃんw」と油断していたら、皆さんアルファベートの国のご出身だけあって、流石に読める・書ける。早速ビシバシしごかれた。しかし大人しいフリをしていられたのも数日だけで、他のクラスメートが答えられない時に発言していたら、徐々に助け舟出し隊としての頭角を現し、今ではお笑い要員としての地位を確立した(だって、黙っていたら先生も困るし、何か勿体なくない?)。在デンの先人のブログを読んでは「どんな怖いクラスメートがいるんだろう?」と戦々恐々としていたのだが、そんなクラスに一人はいそうな面倒くさい人物とはワタシのコトだったかもしれない。まぁ、いいや。その後、しばらく休んでいたというクラスメートがポツリポツリと姿を現した。どうやらアジア人がワタシ一人という訳ではなさそうだ。やれやれ。

よく耳にする東洋・西洋言語間に現れる壁とやらにはまだ出くわしていない。いや、多分既に現れていても認めたくないだけだろう。まぁ、そのうち直面する筈なので奢ることなく、そして恐れることなく準備だけはしておこうと思う。

 そうだよね。コトバが出来なかったら薬も買えないしね。写真は点字付頭痛薬の箱。
見えない壁について薀蓄語るより、見える優しさにほっこりして取説でボキャブラでも増やすコトにするわ。

3.12.2013

期待しない力

先日の春の陽気から一転して、一気に「暖かくない日常」に戻った。何のことはない、暖かかった頃にわずかに点けておいた暖房を消したのだが、それををすっかり忘れていた為、ダブルで寒く感じただけである。スイッチひとつで快適な生活環境が得られることはありがたい。それはさて置き、思わず感心した出来事があった。配管工が工事を終わらせてくれたのだ。しかもデンマークとしては驚異的なスピードで。



しばらく留守にすると水の跡がくっきり残る、きちんと水が止まらない蛇口に彼が業を煮やしたのが火曜日の夜。ワタシ達の住んでいるアパートは賃貸なので、修理は大家の了解がいる(勿論経費の負担も大家だ)。大家に連絡したのが水曜日。木曜日か金曜日に工事の業者が来るという。在デン8ヵ月のワタシが受けた印象では、この手の業者さん達も朝は早い。一件目のアポが8時とか普通なのだろうが、流石にそこまで早いのは勘弁との旨を伝えておいた。

出社を遅らせて彼がスタンバイしていたが、全く連絡がないまま木曜が過ぎた。金曜日、「今日もダメだったね」と彼が仕事に出かけてから業者がひょっこり現れた。確かに午前中とは言え、予定を軽く1時間オーバーだ。だからと言って、帰って貰う訳にはいかない。全く心の準備が出来ていなかったワタシが持ち合わせた全てのデンマ語を駆使して状況を説明し、こちらの要望を何とか伝えた。職業云々でひとくくりにするのは嫌だが、彼等に英語が通じないことが多い(だからこそ彼に待機して貰っていたのだが)。

そんなワタシの心配をよそに、業者さんは嬉しいサプライズと共に作業を終わらせてくれた。


サプライズ(其の壱): 
玄関で靴を脱いでくれた。 そんなコトをしてくれた業者はキミが初めてだよ!

サプライズ(其の弐): 
業者さん: 「今は手持ちの部品がないから30分後にまた来るよ」 → ホントに戻って来た(以前、帰ったまま戻ってこない業者がいたな・・・)

サプライズ(其の参): 
ワタシ: 「遅くても○○時には家を出る必要があるんだけど」 → 時間余裕で作業終了!


作業終了後の水回りは当然掃除がなされた形跡が全くなくて、ぐちゃぐちゃだったし、かけておいたハンドタオルも使われて思いっきり汚れていたけど、終わり良ければ全て良し。取り換えた古い蛇口も業者さんが持って行ってくれたではないか(ウチには取り外された後再利用の予定など全くない古い換気扇がありましてね・・・)!



無駄なストレスを消費することなく快適なデンマーク生活を過ごすのに必要なのは期待しない力だと密かに思う。

クリスマスの飾りのパターン。日頃大雑把に見える彼等だけど、単に出来ないフリをしているだけだと思う。論点はそこではなくて、“Power of Low Expectations”を「期待しない力」としか訳せないワタシの日本語の方が問題だ。嗚呼、どうしよう。

3.05.2013

先入観が遮る、新・東洋の味

3月に入り、日照時間が更にぐんと長くなった気がする。先週の金曜日などはサングラスが必要な程で、バルコニーでデンマーク人がバーベキューをしててもおかしくなかったくらいだ。春到来である。最近外に出るのが億劫になって来たので、これを機に少しでも状況が改善すると良いのだが。買い物と言えば、環境保護の為に受け取りを拒否するデンマーク人が多いスーパーのチラシを、未だ継続して取っている。渡欧直後のようなスーパーで驚くようなコトは全くなくなってしまい、新鮮さに欠けるのかスーパーでの買い物も楽しくなくなってしまったとぼやいていたのだが、先日、久しぶりに考えさせれる商品に出くわした。


いやいや、思いっきりご飯にかかってますやん。SWEETって何?SWEETって?甘いの?そして「bazar」は「bazar tilbud」ではなく「bizarre」の誤植ではないか?はたまた、この「sauce for rice*」の「*」は実はこの商品はドッキリであることの表れで、チラシ最終頁に一足早いエープリルフールである小さい説明があるのでは?とか、色々考えが巡ってこのページを開いてからしばらく動けなかった。醤油の記載こそなくても、黒い亀甲印を目にしただけで、醤油と認識してしまうこの日本人脳(例外としてTERIYAKI ソースがあるが、これはこれで市民権を得つつある)。先入観は時として新しい情報を受け入れる足枷となる。

ここで一歩繰り下げてワタシのキッ○ーマン持論について説明する必要がある。ワタシにとっての初めての外国=北欧某国Nで、ワタシの行動範囲内で買える日本食は醤油しかなかった。それがキッ○ーマンであったかどうか定かではないが、中華レストランのテーブルに備わっていたのは赤いキャップのそれであった。 即ちキッ○ーマンのある場所にはa)日本商社マンが歩き商品を広めた、b)中華レストランの進出、c)駐在サマが持ち込んだ食文化、d)日本で醤油に恋してしまった現地人のUターンの現れ、etc. 過去にその場に日本に関わったヒトがいたという教科書には出てこない涙と感動に溢れた歴史がある筈だ。

書いてみると全く大したことないキッ○ーマン持論(多分アメリカでお豆腐を広めた話と混同している模様)だが、海外に住む日本人にとって、醤油とはキッ○ーマンを指す。そして正統派キッ○ーマンは他のそれよりも高い。どうせ同じ醤油だろうと試しに海外商品を買ったら全く美味しくなくて悔しい思いをした元貧乏学生としては、醤油について色々書きたいことはある。

まぁ、形が旅行であれ何であれ、外国で経験した日本食物語は皆、何かしらあるのではないだろうか?西に何にでもオリーブオイルをかける(もこみち氏)イタリア人がいるとすれば、東は醤油の日本人。 ハワイのパンケーキショップではパンパン、と手を叩くとウェイターが醤油を持って来るという(嘘です)。

醤油、醤油としつこく書いてきたが、日本人にとってお米こそが聖域であり、外国人には踏み込んで貰いたくない領域なのだろう。だからこそカレーでもなく、丼もののつゆでもない醤油に似た物体をがご飯にかけられるのを目撃した瞬間、日頃眠っている何かが目を覚まし警告するのだ。

自ら発せられる警告を打ち破り、先入観を克服した向こう側には新しい東洋の味が待っている(かもしれない)。