7.16.2012

Prologue (其の壱)




ワタシはデンマーク人と結婚するに当たりデンマークに引っ越してきた人間である。
初回のデンマーク滞在は3日間。来訪2度目が移住目的である。そして移住の準備期間はわずか1か月半(ヒャッハー)。

仕事は辞めた直後だった為、引越しと言う私事に専念出来たが、自分の城であった一人暮らしのアパートを引き払うのは、決して心躍るイベントでもなかった。アパートを引き払い海外への引越すのはこれが初めてではなかったが、今回は実家へ戻らずの直接移住だった為、思い出したくない労力を伴った。

日本を離れるに当たり、事前に将来必要になりそうな書類を集め、国民年金、健康保険、税金、戸籍関連、金融関連、移転届の提出等の絶対必要な手続きをこなした。そしてアパートの解約、渡欧のフライトの変更、欧州内移動のチケットの予約、携帯電話の解約、ジム・ガス・電気・水道・ネットの解約、保険金払い戻しの手続き、アパートを退去した後の出発までの宿の確保、空港へのスーツケースの輸送等の手配を完了させた。後は所持品を振り分け、発送・処分するのみとなったが、これには最後まで泣かされた。

デンマークへの荷物は船便で送った。一度にまとめて送ると安くなるのは知っていたが、
小さ賃貸にそのダンボールを保管する場所があるわけもなく、パッキングが終わる度に発送した。小型の生活家電などオークションで売れるものはオークションで売り、家族・友人に譲れる物は引き取って貰い、それ以外の家具・家電は見積もりを取った上で、地元のリサイクルショップ数社に買い取って貰った。結局料金を払って処分した物は冷蔵庫、ベッド、大型の机、寝具のみに留まった。大量の本は自分で持ち込めなかったので、図書館へ寄付した本以外の洋書は買い取りに来て貰った。換金目的より、ワタシの手を離れてもまた使って貰いたかったので純粋に嬉しかった。残ったもののほとんどは実家に送った。ワタシも物を捨てられない人間だが、このDNAは間違いなく両親から譲り受けたものである。

アパート引き払い前々日は徹夜でスーツケースをパッキング・空港へ発送し、実家への荷物をまとめ、アパートの掃除をした。その甲斐あって契約時に提示された最低限の清掃料以外の料金は請求されなかった。敷金・礼金なし物件だったので、嬉しい誤算であった。

友人が提供してくれた宿泊先でリラックスした後、空港でジャスト23キロのスーツケースを受け取った。この渡欧で地球を1周半したことになる。もうお役目放免だろう。チェックインを済ませ機内に乗り込んだ。

離陸準備時には職員が作業している様子を眺めるのが好きなのだが、彼等が手を振ってくれているのを見て思わず涙した。このサヨナラは今までのそれとは別の意味を持っていたからだ。


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